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所長雑感

経営業務の管理責任者

経営業務の管理責任者について

「経営業務の管理責任者」とは、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理する責任者のことをいい、建設業経営に関し、所定の経験を有していることが求められています。

建設業の経営は、他の産業の経営とは著しく異なった特徴を有しています。すなわち、建設業は一品ごとの注文生産であり、一つの工事の受注ごとにその工事の内容に応じて資金の調達、資材の購入、技術者及び労働者の配置、下請け人の選定及び下請け契約の締結を行わなければならず、また工事の目的物の完成まで、その内容に応じた施工管理を適正に行うことが必要であります。したがって、建設業の許可にあたっては、建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有していることが求められています。

経営業務の管理責任者の要件は、たびたび改正されていますが、現在は「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。」とされております。

改正以前は、法人の場合においてはその役員のうち常勤であるものの一人が、個人である場合にはその者又はその支配人のうち一人が許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であることを必要としていましたが、これは経営能力を一人の能力で担保できる者の設置を求めていた点で、建設業者には厳しい要件となっており、新規に要件を満たす者の確保が難しくなっている点が指摘されていました。このため、将来の建設業の担い手を確保し、建設業者の持続可能性を確保するため、経営の適正性の要件を会社全体として満たしている場合についても認めるよう要件を拡張する観点から現在の要件に改正されています。

経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものの具体的要件

「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの」について、建設業法施行規則で定める基準は以下のとおりです。

常勤であること

経営業務の管理責任者は「常勤」の者でなければなりません。
常勤とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)していることです。法人である場合においてはその役員のうち常勤であるもの、個人である場合にはその者又はその支配人で当該事業に専属で従事している方が該当します。

適切な経営能力を有すること

法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者)、個人である場合にはその者又はその支配人が、経営業務の管理を適正に行うに足りるものとして以下の基準を満たさなければなりません。

【補足】
※業務を執行する社員
持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)の業務を執行する社員
※取締役
株式会社又は特例有限会社の取締役
※執行役
委員会設置会社の執行役
※これらに準ずる者
法人格のある各種組合等の理事等
※支配人
個人事業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人(商業登記が必要)
【注】執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等については、原則として「役員」には含まれません。

具体的には、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれかに該当することが必要です。

(イ)常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当すること

①建設業に関し、経営業務の管理責任者(法人の役員、個人事業主、令3条の使用人)として5年以上の経験を有する者

【補足】
許可を有していたか否か、また業種に関係なく建設業の経営経験が5年以上あることが必要です。令3条の使用人とは、「建設業法施行令第3条に規定する使用人」のことで、建設工事の請負契約の締結及びその履行にあたって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支店及び営業所の代表者である者、「支店長」「営業所長」、個人事業で支配人登記された支配人のことをいいます。

⇒令3条の使用人とは

②建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者

【補足】
「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」とは、取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念した経験です。該当するか否かは個別に審査が行われます。

③建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

【補足】
経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験とは、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経験をいいます。該当するか否かは個別に審査が行われます。

(ロ)常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、当該建設業者又は建設業を営む者における5年以上の財務管理、労務管理及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くこと

①建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者

【補足】
建設業の役員経験が2年以上あり、かつ、建設業の財務管理、労務管理又は業務運営の業務のいずれかの管理職の経験を合算して5年以上必要です。該当するか否かは個別に審査が行われます。

②五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者

【補足】
建設業の役員経験が2年以上あり、建設業以外の業種での役員経験を合算して5年以上の経験を有していることが必要です。該当するか否かは個別に審査が行われます。

③前記①、②の常勤役員等を直接に補佐する者として、当該申請者において、「財務管理」、「労務管理」、「運営業務」の各業務について5年以上の経験を有する者を置くこと

【補足】
「財務管理の業務経験」とは、建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務をいいます。「労務管理の業務経験」とは、社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務をいいます。「業務運営の経験」とは、会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務をいいます。これらの業務を補佐する者は一人で複数を兼ねることが可能です。

(ハ)国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの

【補足】
(ハ)については、(イ)、(ロ)の基準により確保される経営体制と同等以上の経営体制が確保されると国土交通大臣が認めた場合には基準を満たすものとして扱うこととしたものです。これは一般的でない極めて特殊な場合を想定した規定であり、個別の申請に基づき国土交通大臣が認定する途を開いたものであります。極めてレアケースです。

経営業務の管理責任者の取扱い

○法人の場合、代表取締役である必要はありません。
○法人の経営業務の管理責任者は常勤でなければいけませんが、必要経験年数の算定においては、非常勤役員や社外取締役としての経験を含めることは可能です。
○所定の要件さえ備えているなら、主たる営業所に1名いれば十分です。
○複数の業種での経営経験を合算してなることもできます。
○複数の業種を営む建設業での経営経験は、複数業種全てについての経営経験とすることができます。
○経営業務の管理責任者となる者が専任技術者としての要件も満たしている場合、同一営業所(本社又  は本店等)内に限って兼務ができます。
○建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合に限り兼任することが認められます。

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